6/07/2020

日本の「グローバルニッチトップ企業」とドイツの「隠れたチャンピオン企業」の違い④ <どこが違うのか?>

こんにちは。公認会計士の山本です。

グローバルニッチトップとすることのできる技術の違い ー 裾野の広さ
前回のブログで、ドイツの隠れたチャンピオン企業が、どのように海外事業を展開しているのか、ご理解頂けたのではないかと思います。そして、私たち日本人の誰もが知るような隠れたチャンピオン企業が、身近に幾つもあることも分かって頂けたものと思います。そうしましたら今度は、そのうちの一社について、どのような製品を扱っているか、思い浮かべてみて頂きたいと思います。そして、その製品と同じ種類の製品を製造・販売している日本企業がないか調べてみて欲しいと思います。恐らく、同種同類の製品を出している日本企業があるのではないかと思います。その日本企業のホームページに行ってみると、その会社がどのように海外事業を展開しているか分かります。海外事業に関して比べてみると、恐らく、同じ製品を扱っていても、ドイツ企業がこれで、日本企業はこれか、という程の大きな差があるのではないかと思います。
そうなのです、ドイツ企業はそういう製品でも、グローバルニッチトップにすることが出来てしまいます。ドイツの隠れたチャンピオン企業が、ドイツ経済に貢献できる程の層の厚さで存在するのも、技術的に世界で唯一無二の製品でなくても、また、巨大企業に独占的に認めてもらえる程の技術を必要とする製品でなくても、即ち、技術的にそこまで尖った製品でなくとも、グローバルニッチトップにすることができてしまう、という点が大きな要因として挙げられます。勿論、尖った技術を持つ、ドイツの隠れたチャンピオン企業も数多くあります。その場合でも、「技術」だけで届くエリアに安住することはありません。その先の商圏を広げる行動を必ず行っています。
これに対し、日本のグローバルニッチトップ企業や、グローバルニッチトップ企業を目指す企業は、徹頭徹尾「技術」によりグローバルニッチトップを目指す、といったことを言います。私は、この点が変わらない限り、日本のグローバルニッチトップ企業が、ドイツの隠れたチャンピオン企業のように、国の経済に貢献する程の厚みをなすことはないのではないかと考えています。このように書くと、多くの方からお叱りを受けそうですが、「技術」だけで得られる果実は意外と小さいと思います。「技術」がなくてもよい等とは一切、考えておりませんし、述べてもいません。「技術」は大切な要素です。しかし、それだけで届く距離は意外と短く、狭いのではないか、ということが私の言いたいことになります。
ドイツ語圏の隠れたチャンピオン企業のその他の特徴
今回のブログの最後は、ドイツ語圏の隠れたチャンピオン企業に共通する、その他の特徴についてご紹介します。日本企業と類似する点もあれば、相違する点もあると思います。先ず、その殆どが非上場の同族企業です。本社はベルリンやミュンヘン、フランクフルトのような大都市ではなく、のどかな田園地帯にひっそりとあるような会社ばかりです。私は何社か、本社を訪問したことがありますが、実際に行ってみて驚いたことを覚えています。この、時間が止まっているような、美しい風景の中にある小さな会社が、地球の反対側の国に拠点を構え、世界中で事業をしているのか、と。
更に隠れたチャンピオン企業は、日本企業ほどには多くの製品群を抱えていません。この点については、日本企業は器用なので、求められると作ることが出来てしまう。しかし、一つ一つの技術や製品に対する需要を、最後まで開拓しきることはしない、といったことが、この違いとして表れているのではないか、と考えます。また、隠れたチャンピオン企業は、モノ作りをとても大切にします。従業員も超長期間、勤務している人や、親の代からこの会社で働いています、という人も少なくありません。100年以上の歴史のある企業もかなり多いです。
日本人からすると、欧米系の外資ということで、アメリカもドイツも同じようなものなのだろう、と考えてしまいがちですが、両者は全く別の企業文化を有しています。そして、このような企業が海外に10ヶ所、20ヶ所、30ヶ所、それ以上の海外拠点を設け事業展開をしている訳です。


日本の「グローバルニッチトップ企業」とドイツの「隠れたチャンピオン企業」の違い

④ どこが違うのか? (本ブログ)