シリーズ「こういう会社にグローバルニッチトップ企業になってもらいたい」第1回
こんにちは。公認会計士の山本です。
四季報などを見ていると、こういう会社にはグローバルニッチトップ企業になって欲しい、と思える会社が幾つもあります。そういう会社について、「シリーズ『こういう会社にグローバルニッチトップ企業になってもらいたい』」というラベルを付けてUPしていきたいと思います。
6月に「日本の『グローバルニッチトップ企業』とドイツの『隠れたチャンピオン企業』の違い」というブログをUPしましたが、日本企業でグローバルニッチトップ企業となっているケースの殆どは、製品力だけでそこまで到達している会社です。
一方、ドイツの「隠れたチャンピオン企業」の場合、製品自体が日本のグローバルニッチトップ企業ほど尖ったものでなくても、若しくは、会社の製品が、日本や東アジア地域が世界の主要製造基地になっている自動車や半導体の製造に使われるものであるため、そこで採用されることでグローバルニッチトップ企業になれてしまったようなケースでなくても、自らの販売力、海外展開力を駆使して、グローバルニッチトップ企業になっているケースが数多く見られます。
このシリーズでは、このような違いが存在することに気付くことなく、自らの可能性を十分に発揮し切れていない、と思われる日本企業を紹介したいと思います。
第一回の今回は、高橋カーテンウォール工業(ジャスダック市場上場、証券コード1994)という会社です。この会社は「PCカーテンウォール工法」という、ビルの外壁を予め工場で生産し、現場で取り付ける工法で、国内市場の5割以上のシェアを獲得している会社です。
「PCカーテンウォール工法」は、会社の資料によると、「高層ビルをはじめ、大規模ビルの標準的な工法として定着」しているとのことで、「ザ・ペニンシュラ東京」や「渋谷PARCO」等が施工事例として紹介されています。
過去10年間の業績は、
2019年12月期の売上高が突出していますが、これは東京オリンピック関連とのことであり、6月の短信に記載された2020年12月期の業績予想は、以下のようになっていますので、
売上高で60~90億円、利益面で10億円前後、というのが、この会社の最近の定位置のように思われます。
ただ、この会社は日本でしか事業をしていませんので(大連にも関係会社がありますが、連結の対象にしない規模とあるので考慮しないことにします)、同社の国内シェアを考慮すれば、同社の業績は日本の高層ビル・大規模ビルの新築件数に比例しているものと推測されます。
で、ここからが私の思うところなのですが、
日本で5割以上のシェアを獲得できる技術力を持っているのであれば、GDPが世界の約6%を占めるに過ぎない日本の外にも、商売を広げて行くのが理に適っているのではないかと考えます。世界を見渡せば、高層ビル・大規模ビルの新築件数が日本より多い地域は結構、ありそうですし、今後、増加していくと考えられる地域も結構、あるのではないかと思いますので。
恐らく、この会社の製品は素晴らしいのだと思うのですが、製品が一人で歩いて行ってお客さんを見つけて来てくれるような類のものではなかった、ということなのだと思います。そのため、1992年に中国に出てはみたものの、上手く行かなかったので、それであれば、余計なリスクを取るよりは、十分に商売が成り立つ国内に、経営資源を集中した方が良い、ということだったのではないかと想像します。
確かにその通りなのかも知れませんが、ドイツ企業を始めとする欧州企業を見てきた人間からすると、何とも勿体ない話だ、と思えますし、また、大きな時代の流れからしましても、日本の外の商売を増やしていくことが、より「正解」に近いのではないかと思いますので、是非、チャレンジして頂きたいと思います。
(おまけのグラフ - 日本の立ち位置)
株価的にも、現在、PBRが 0.5 を割る程度の評価でしかありませんが、海外に積極的に取り組みだしたならば、そういう評価ではなくなるように思います。