10/27/2020

リオン株式会社(6823)

 シリーズ「こういう会社にグローバルニッチトップ企業になってもらいたい」第2回


こんにちは。公認会計士の山本です。

シリーズ(「こういう会社にグローバルニッチトップ企業になってもらいたい」)2回目は、補聴器で国内シェアトップを誇るリオン株式会社です。東証一部上場の企業で、音響、振動技術の研究開発に強みを持ち、有価証券報告書の沿革欄には、「世界初の~」、「日本初の~」、「~を開発し、製造販売を開始」といった言葉がずらりと並んでいます。社名の「リオン」は「理学」の「リ」と「音響学」の「オン」から来ているそうです。

補聴器以外にも補聴設備機器、医用検査機器、音響・振動計測器、微粒子計測器といった製品群があり、補聴器、補聴設備機器、医用検査機器を「医療機器事業」、音響・振動計測器を「環境機器事業」、微粒子計測器を「微粒子計測器事業」として、セグメント別に売上高、利益を開示しています。

また、有価証券報告書に以下の記載があるのですが、これを書けること自体、すごいことに思えます。

「当社グループ事業の最大の特徴は、主要製品のすべてが国内市場において高いシェアを確保していることであります。これは、他社が手がけていない独自の事業を切り開き、市場に展開してきたためであり、それぞれの分野において事業の開始以来、多くの先進的な製品を市場に投入し続けてまいりました。」

会社の数字を見てみますと、

2016/032017/032018/032019/032020/03
売上高188億円191億円203億円212億円214億円
営業利益22億円18億円25億円27億円24億円
当期利益15億円14億円18億円20億円17億円

と、徐々に売上を伸ばしながらも、安定的に推移していることが見て取れます。

事業毎の内訳はこちらになります。

2016/032017/032018/032019/032020/03
売上高188億円191億円203億円212億円214億円
 医療機器事業113億円113億円115億円116億円122億円
 環境機器事業
75億円
78億円
88億円
49億円46億円
 微粒子計測器事業47億円45億円
営業利益22億円18億円25億円27億円24億円
 医療機器事業14億円10億円9億円8億円9億円
 環境機器事業
8億円
8億円
16億円
6億円5億円
 微粒子計測器事業11億円9億円

医療機器も伸びていますが、クリーンルームに使われる、微粒子計測機器が伸びているのが見て取れます。また、同事業の利益率が高いことも分かります。


それでは、他社が手がけていない独自の事業を切り開き、市場に展開してきた同社の海外事業はどうなっているか。総売上高とその中の日本以外の地域の売上高の推移はこちらになります。

2016/032017/032018/032019/032020/03
総売上高188億円191億円203億円212億円214億円
  内, 日本以外
21億円19億円23億円32億円32億円
11%10%11%15%15%

この5年間で海外売上高が10億円強、伸びていることが分かります。増加の主な要因は恐らく、微粒子計測機器事業ではないかと推測されます。理由は2020年3月期から、セグメントとして新たに「微粒子計測器事業」を区分して表示するなど、同事業部門の売上が伸びていることが想像できますし、クリーンルームの大口の需要者として半導体メーカーが頭に浮かぶのですが、そうしたメーカーは韓国、台湾、中国に存在し、しかも、それらの企業であれば、日本からでも購入すると思われたからです。

なお、ここで「日本から」と書いたのは、リオンは上海に子会社、上海理音科技有限公司を持っていますが、小規模を理由に連結財務諸表に含めない判断をしているくらいですので、日本以外の地域への売上はほぼ、日本からの直販と推測しました。

まあ、ただ、それにしても、海外売上高が20%にも満たない、というのは余りに寂しいように感じられます。補聴器にしても、その他の機器にしても、日本人しか使用しないのであれば、それでよいと思うのですが、実際はそうではありませんので。むしろ、数々の「世界初」がありながら、「これだけですか?」という気持ちになってしまいます。

私が見てきたドイツ語圏の企業が、若し、これだけの技術力、開発力を持っていたならば、確実に全世界に50以上の海外子会社を持ち、日本以外の複数国でトップシェアを獲得しているのではないか、と想像されますし。。。

恐らく、日本の補聴器市場で、同社と競合しているメーカーの多くは欧州企業なのではないかと思います。それらの欧州企業は日本以外でも(中国でも、インドでも、ロシアでも、アメリカでも)、日本でやっていることと同じことをしているのだと思うのですが、この会社であれば、そういう海外事業展開ができるのではないかと思えます。また、そういう海外展開をして欲しいとも思います。

即ち、製品に対する需要のある国・地域に自社子会社を設け、現地の人間を雇い、事業をしてもらう、という展開です。これが出来れば、現地のことをよく知る人間が売ることになるので、現地市場に入っていけるようになると思いますし、また、人材も現地調達なので、日本企業がよく言う「グローバル人材」がどうのという問題もクリアできます。しかも、リオンが日本で競合する欧州企業が、海外で普通にやっているやり方でもありますので。


(いつものおまけのグラフ - 日本の立ち位置)

最後に、上に書いたような期待も込めて、今日、100株だけリオンの株を購入しました。50社とは言いませんが、10年後に海外子会社が20社くらいになり、海外売上高が日本を上回る展開に、若し、なっているなら株価も、5倍から10倍くらいにはなってくれているのではないかと思います。