こんにちは。公認会計士の山本です。
30代になってから会計の勉強を始めようとしても、日本で会計の勉強の入口になっている簿記の勉強が、「理屈はいいから、これを覚えろ、あれも覚えろ」式の勉強なので、一度、社会人を経験し「なぜ、そうするのか?」とか、「何の役に立つのか?」という思考に慣れてしまった人には、なかなか馴染めないのではないか、といったことを以前、書きましたが、(30歳過ぎ、社会人が会計の勉強を始めると)
これが何かと言いますと、
貸借対照表を2期分、用意し、科目毎に後の期の残高から前の期の残高を引いた額を並べただけのものなのですが、
どこの会社でも良かったのですが、今回はトヨタ自動車の単体の直近2期の貸借対照表を使ってみました。(貸借対象は最後に添付しました)
そもそも各期の貸借対照表の右と左の合計は完全に一致していますので、2期間の科目毎の差額の合計も当然、右と左が一致することになります。
ということで、
ポイントは何か、と言いますと、これは、トヨタ自動車が2019年4月1日から2020年3月31日までの一年間に切った全ての仕訳を科目毎に集計したものと完全に一致している、ということです。
で、それが何を意味するのか、と言えば、一つ一つの仕訳を入れる、ということは、結局、その仕訳を入れる前の時点の貸借対照表を、その仕訳を入れた後の貸借対照表にしている、と言うことに過ぎないということになる訳です。まあ、普通は仕訳を一つ切る毎に貸借対照表を作りませんので、そういうことにはなりませんが、概念的にはそういうことになります。
もちろん、このように書くと、会計の勉強を始めたばかりの頃の私のように、いやいや仕訳には、貸借対照表の科目だけではなく、損益計算書の科目もあるだろう、という疑問を持つ人もいるのではないかと思います。
そういう疑問を持たれた方のために、損益計算書の科目で切った仕訳がどこに行くのか、ご覧頂きたいと思います。
損益計算書で切った仕訳は、黄色で表した部分になります。
上の表と見比べながらご覧頂きたいのですが、
そうなんですね、損益計算書の科目で切っている仕訳というのは、損益計算書の科目で仕訳を切っていることは切っているのですが、
結局は、損益計算書というのは、貸借対照表の純資産の部の株主資本(の利益剰余金)の中の、事業活動に係る部分の動きを取り出して見せている表に過ぎないので、
仕訳を切る時に「売上高」という損益計算書の科目を使って仕訳を切ってはいても、頭の中では、「売上高」であると同時に、貸借対照表の「株主資本」(若しくは、その小科目である「利益剰余金」)というイメージを最初から持てていると、
簿記という作業が、最終的にどこに辿り着くための手続をしているのか、見えるようになると思いますので、これを知っていると、簿記の勉強が少しは取っつき易くなるのではないかと思います。
(付録1-株主資本等変動計算書)
財務諸表には、貸借対照表、損益計算書の他に、株主資本等変動計算書というものもありますが、下の表の水色の部分が同計算書が表している部分になります。上の表で黄色で表した損益計算書の部分は最終の当期純利益として一行で表示されています。このように、株主資本等変動計算書という財務諸表も、損益計算書同様、対象とする範囲と見せ方こそ違いますが、貸借対照表から純資産の動きを取り出して見せている表ということになります。
(付録2-トヨタ自動車(単体)の貸借対照表(直近2期))