こんにちは。公認会計士の山本です。
神戸製鋼、商工中金、日産自動車、SUBARUと企業不正が続いていますが、
今はどうか分かりませんが、私が昔、銀行にいた頃、稟議書というものは、その案件に関連する全ての人達の間を回っていき、最終的に決裁者の承認を得る、というものでした。
そのため、関連する人間の数が多いと、
A4の紙の右下から右上に掛けて職階順に判子が押されていき、更に右上から左上の順に稟議書を、逆L字形に取り囲むように判子が押されていく、という感じでした。
なので、私がその稟議に反対であったとしても、自分のところに回ってきた以上、稟議の流れを止める訳にはいかないので、
判子を斜めに押してみたり、もっと強く反対したい時は、逆さに押してみたり、と、ささやかな抵抗を試みたりする訳ですが、
結局、稟議書は自分の所を通り過ぎて行きました。
勿論、稟議書を作成する前に、起案部署で案件の検討が入念に行われ、関係部署への説明・理解も得られ、また、決裁権限を持つ上司の承認も得られているので、
稟議書は「形」に過ぎないのですが、
まあ、何というか、
この意思決定の方法は
「現場が現場のニーズに応じて主体的にモノゴトを決められる」、
「一旦、スタートするとスムースにモノゴトが進む」等、
メリットは大きいと思うのですが、
何せ、反対が出来ないので、問題点についてオープンで正式な議論がない。
それと、組織全体と現場とで、本来、異なる意思決定が求められるような場面でも、現場の方が優先されてしまう可能性が高い。
そういう根本的な欠陥を内包しているのだと思います。
ここのところ、神戸製鋼、商工中金、日産自動車、SUBARUの不正の報道に接する機会が多い訳ですが、そういう時、銀行時代の逆L字形の稟議書を思い出してしまいます。
これらの不正に共通するのは、恐らく、個人的に、その不正により、金銭的な利得を得ている人がいる訳ではないのに、
そういう不正が、いつの間にか、どういう訳か、行われるようになっていた、ということなのではないかと思います。
現場力では、明らかに日本の方が優位にあるように思われるのに、企業として海外勢に負けつつある、というのも、結局、その辺に「根」があるのではないかと思います。