5/18/2020

日本のグローバルニッチトップ(GNT)企業が増えない理由

こんにちは。公認会計士の山本です。

経済産業省が、
2014年に「グローバルニッチトップ企業100選」を選定し、
今年、新たに「新グローバルニッチトップ企業100選」を選定するそうで、
日本企業、特に海外展開が十分に出来ていない中小、中堅規模の企業の中に
世界に通用する製品を持つ企業が、数多くあることや、
長期的なトレンドとして、
世界経済が大きく伸びる中、
日本経済が殆ど成長していないことを考えると、
こうした取り組みは、非常に重要と考えますが、
一方で、
「グローバルニッチトップ企業」という語に、近い意味を持つ
「隠れたチャンピオン企業」という語に該当する企業を、数多く輩出する
ドイツ語圏の中小、中堅企業(Mittelstand)を間近に見てきた人間として
私自身は、海外事業のスピード感、展開力という点で、
日本企業はドイツ語圏企業に、圧倒的に劣後しているように感じています。
例えば、
「あっ、ここで止まっちゃうんだ」
とか、
「あっ、ここで決めないんだ」
とか、
「ホントに世界に売りたいと思ってます?」
と聞きたくなるような場面に、何度も、何度も、何度も、遭遇していますし、
(実際にお会いした方には、大変、失礼であり、申し訳ないのですが、
 ドイツ語圏企業と比べると、残念ながら、そう見えてしまいます。)
海外子会社の数を見ても、
私の見てきたドイツ語圏の企業では、
10社以上というのは、当り前であり、
30社以上あっても、全く驚きませんが、
日本の中小、中堅規模の企業で、海外子会社が10社以上という会社は、
私があちこち調べた限りでは、(500社以上、調べましたが、)
ほぼゼロであり、
そういう、何社もない子会社に対してですら、
私のような看板を出している人間に来る依頼は、
海外子会社がコントロールできなくなってしまった。どうしたらよいだろうか?
といったものであり、
一方が10社以上は当り前というのに対して、
これでは、お粗末過ぎるだろう、と
正直なところ、思っています。
だから、だと思うのですが、日独双方のグローバルニッチトップ企業を比べてみると、
日本企業のグローバルニッチトップ企業というのは、
製品の力だけでグローバルニッチトップになっているケースが多いように思います。
ニッチ過ぎたり、技術が特殊過ぎて、
他が参入しない製品というイメージです。
なぜなら、
それであれば、海外子会社の数など関係なしに、
製品自体がお客さんを見つけて来てくれるから、なのだと思います。
一方、ドイツ語圏企業はどうか、と言うと、
私は、技術は素人なので、
そういう人間の話として聞いていただければと思いますが、
あれっ、これだったら、日本企業でも作れる会社( or 作ってる会社 )って
結構、あるんじゃないの、という類(たぐい)の製品が圧倒的に多いという印象です。
でも、彼らはそれで、世界を取っている。
要は、
余程、特別なモノであれば、それだけで GNT に辿り着けるのではないかと思うのですが、
そうでないモノの場合は、世界でモノを売り、トップになるにはどうしたらよいか、
という議論がないと、GNT には辿り着けない、ということなのだと思います。
そして、日本の GNT というのは、圧倒的に前者なので、
数が増える筈がなく、
ドイツ語圏の GNT というのは、圧倒的に後者なので、
GNT の総数において、当然、日本を圧倒する結果につながっているのだと思います。
今の日本の GNT の議論を見ると、
世界中で売れる、ニッチで、誰も真似のできないような製品を
頑張って開発しましょう、
みたいな話ばかりで、
そういう一部の、特殊な製品以外の、
多くの、良質な日本の製品を海外に届けるためには、
製品力以外のところで、企業が何をどうすればよいか、
という議論が欠如しているのだと思います。
最後に、 
これまで、色々とやってきたが、
自社の持つ製品の力からいったら、
もっと多くの海外需要が獲得できていて然るべきなのに、
と、お考えになられている方がいらっしゃいましたら、
こちらまで、ご連絡ください。
それは、製品の力だけを考えていては、解決しない問題と考えます。