こんにちは。公認会計士の山本です。
私は日本のコロナ支援は、内容的には著しく充実していると思っているのですが、
充実した支援策が用意されていることと、
実際に支援が受けられることとが、まったく繋がっていない、
という致命的な欠陥を有しているように思っています。
現在の状況下では、普段、書類仕事に慣れていないような人でも、どのような制度があり、自分がどれを利用できるのか、直ぐに分かるようになっていて然るべきだと思いますし、その上で、それらの制度を使うに際し、専門家に頼らずとも、自分自身で申し込めるようになっていなければ、意味がないのではないかと思うのですが、
一つには、多くの制度が既存の制度を、多少、簡素化しているとは言え、コロナ仕様に仕立て直しているだけのものであるため、
既存の制度で要求されている書類や手続が、基本的には踏襲されてしまっており、この手の書類仕事に慣れていない人にとっては、自分一人で申請迄、辿り着くのが、恐ろしく難しくなっているように思われ、
また一方で、申請を受ける側も、平時、時間を掛けて処理することを前提に設計されている制度の上に、コロナ支援の制度が急拵えで乗っけられたような形となっているため、ほぼ全ての企業が対象となり、ボリュームが圧倒的に増加した、現在の状況に対応しきれていない、という事態が生じてしまっているように思われます。
で、次に、その辺の課題を、仮にクリアできたとして、
いざ、実際に、そういった支援を使おうとしてみると、
所管の役所が出している情報だけでは、
分かっている人は分かるけれど、的な情報が多く、
今回のように、
分かっていない「素人」が大量に押し寄せる事態には
対応し切れないように思えます。
例えば、私も、会計士ではあっても、自分の専門以外は「素人」なので、
「新型コロナ感染症特別貸付」について、
無担保とは書いてあっても、
個人保証の要否が何処にも書いてなかったので、
日本政策金融公庫に問い合わせましたし、
雇用調整助成金にしても、
給与の締日が20日の場合は、
特例措置の始まる4月1日からの
第一回目の「判定基礎期間」の記入方法はどうしたらよいのか、
近くの労働局に問い合わせましたし。
若し、この手の情報が、
FAQに常にUPDATEされていけば、
双方とも、余計な手間を掛けずに済むと思うのですが、
そもそものところ、そこに発想がないから、
こういう制度になっていたりするんだろうな、
と思ったりしています。
最後に、一つ思っていることは、
こういう制度を設計する際は、事前でも、(今の状況では)事後でも構わないので、
100人くらい、一般の人や企業にモニターになってもらい、
その人たちが情報を発見できるか、
発見した情報を理解できるか、
そして、最後まで手続をすることができるか、
ちゃんと確認してもらいたいような気持になります。
因みに、自分が税理士登録しているにも係らず、こんなことを言うのも何なのですが、
税金を払うのに、税理士に何十万円もお金を払わなければ、納税できない、
っていうのも、同じ議論かな、と思えます。
「素人」さんに税の仕組みについて分かってもらおう、とか、
「素人」さんが、自分自身で納税手続を出来る仕組みにする、とか、
そういう発想がサラサラない制度設計な訳で、
今回の問題も、
我々の「公」のシステムが、そういう発想であることからすると、
必然の結果かな、
と、思えてしまったりもします。
因みに、以前、オーストラリアの税金や有給制度について、
調べたことがありましたが、
流石、多民族社会の国だけあって、
情報の作りが、誰もが、目的のところに辿りつけ、利用できるように、
という形で作られているため、
英語というハンデがあっても、
日本からアクセスしている、日本人の私ですら、
簡単、かつ、確実に目的の情報を得ることができたので、
そういう所は、日本も見習って欲しいものだ、と思ったことを覚えています。