こんにちは。公認会計士の山本です。
今日の日経の社説に「内部統制を問い直すべきだ」という記事が出ていました。
制度は色々と整えられてきたにも関わらず、
日本企業の不正や不祥事が後を絶たないため、
「米欧は内部統制を広くとらえ、経営戦略に結びつける。デジタル化で内部統制に用いられるデータや手段も高度化していくだろう。企業にはもっと積極的に内部統制を生かす意識が必要なときだ。」
という主張がされていました。
まあ、しかし、「企業は」とか、「企業には」という視点の主張では、
意味をなさないだろうな、と思えます。
要は、企業の真の所有者である、企業にお金を預けている人間が、
自分自身の資産が、テキトーに扱われてしまった時に、
即ち、不正、不祥事が起こった時に、
役員の退任は当然として、役員や会計監査人に対し、
自らが蒙った損失に相当する金銭の賠償を支払わせるようにしないと、
単に、「企業は」とか、「企業には」と言っても、
何の効果もないだろうな、と思えます。
記事の中にも書かれていましたが、
しっかりと内部統制をするというのは、それだけお金がかかる訳です。
若し、それが無料で出来るなら、
記事にある「企業は」「企業には」というロジックは成り立つと思うのですが、
実際は、お金がかかるので、
結局、企業がそこにお金をかけられるかどうかは、
企業の真の所有者である株主が、それを求めるかどうかにかかっている訳です。
で、企業の所有者である株主が、それを本気で求めているかどうかは
端的には、
実際に不祥事が起こってしまった時に、前述したように、
テキトーに扱われ、失われてしまった、自分自身の財産に対する責任を、
徹底的に、役員等に追及するという行為なのだと思います。
不正・不祥事を起こしても、頭を下げて、辞任すれば、それで済む、
という程度の緩い、財産の「預ける・預かる」の関係だと、
お金を預かる側も、即ち、会社の役員の側も、どこまで、その資産の安全に対して、
お金を掛けていいのか見えませんし、
まあ、何か起こっても、頭を下げて辞任すれば、それで済むので、
企業の側が率先して、あなたの資産を守るために、これだけのお金を掛けます、
その点について、ご了承ください、
ということにはならないのではないかと思います。
要は、一番始めに来るのは、
自分自身の財産を預けている株主の行為なのだと思います。
そこが頓珍漢な議論をしている間は、
不正、不祥事はなくならないだろうな、
と思えます。
まあ、ただ、見方を変えれば、
日本企業の株主は、この程度の不正・不祥事であれば、
アメリカのようにムキになって、内部統制にお金を掛けるより、
全体としては、費用が低く済む、と判断しているのかも知れない、
とも言えるのではないかと思います。
なので、時には、そういう視点の議論があっても良いのではないかと思います。
この程度の責任で済むので、
日本の社長の報酬は、アメリカの社長の報酬よりも、
桁が1つ、2つ、少なくて済むわけですし、
同じことは、監査報酬にも当て嵌まる訳ですし、
社外取締役等という制度も、
年間数百万円程度の報酬で
成り手が出てくる訳ですし、
これほど多くの企業が上場、上場と言って、
監査難民なる言葉すら存在しているのも、
上場していることが、大してコストにならないからな訳なので。