9/03/2019

海外子会社、現金を押えておけば大丈夫か?

こんにちは。公認会計士の山本です。

数年前、とある上場会社の株主総会に参加した時のことなのですが、
その年は、海外の会社を買収した年だったので、
「買収した会社の管理をどのようにしていくつもりですか?」という質問が株主からあり、
それに対して社長さんが、
「今、日本から幹部を派遣して内部統制の整備をしています。その後は、現預金を日本から派遣した人間に任せる予定です、現金を押えておけば大丈夫だと思いますので。」という回答をしていたのですが、
思わず、「そうじゃないんだけどな」と思ってしまいました。
というのは、
海外では、結構、頻繁に見られることですが、
日本から派遣した人でも、
その人の業務に対するチェックが働かない状況では、
不正をしてしまう誘因が大きい、
というのが一つと、
より大きいのは、
目の前の現預金だけ見ていても、
防げない不正は、いくらでもある、
からなんですね。
例えば、仕入担当者が、調達先から賄賂を受け取っていたとしても、
現金だけ見ていても分かりませんし、
仕入担当者が、仕入先とグルになり、架空の仕入を捏造し、
会社に払い込ませたお金を山分けしていても、
現金だけ見ていたのでは、なかなか発覚しませんし、
在庫の管理担当者が、在庫を横流ししていても、
現金だけ見ていたのでは分かりませんし、
営業担当者が自分の業績をよく見せようと、
売れていないものを売れたことにしてしまっても、
また、
定価100の商品を、競合企業が1割引にしてきたので、
当社も90で販売したい等と言って、社内の承認を取り付け、
その裏で、こっそり5のキックバックを貰っていたとしても、
また、
経営者が会社の成績を良く見せようと、
現金の絡まないところの、会計の数字をいじっていても、
現金だけ見ていたのでは到底、分からないと思うので、
現金さえ押えてしまえば大丈夫という考えは、
特に社長さんなら、改めて貰いたい、
と思った次第です。