こんにちは。公認会計士の山本です。
「会計を知っていると役に立つ」と言われますが、
私のように30歳を過ぎてから、一から会計の勉強を始めようとしても、
スムースに進まないことが多いのではないかと思います。
最初の関門は、何から勉強をしたら良いか分からない、ということでした。
会計の勉強をしようと本屋に行ってみても、
「会計」という言葉の入った本は山のようにあり、
何から始めれば良いのか検討もつきませんでしたし、
それでは、ということで、
多くの人がそうするように、簿記の試験を受けることから始めようとしても、
簿記の勉強というのが、これがまた面白くなく、
勿論、人により感じ方に違いはあると思うのですが、
少なくとも、私自身は「面白くない」ので、勉強に身が入らず、
そのまま受けた3級の試験は、結局、
答案用紙が埋まることなく終ってしまいました。
で、何が面白くなかったか、と言えば、
大して難しそうではないけれど、
何のためにあるのかよく分からないような
「決まり事」が次から次に出てきて、
それをひたすら覚え、
その「決まり事」に応じた処理が、
反射的に出来るようになるまで
繰り返し手を動かし、身体で覚え込む、という類いの勉強が、
一度、社会人を経験してしまうと、
「何のためにこんな決まりがあるのだろう?」などと
立ち止まってしまったりするので、
相当、ハードルが高くなってしまったりする訳です。
しかも、当時の私がそうだったのですが、
たとえ3級には受からなくても、
銀行で稟議書を書ける程度の財務分析なら、
見よう見まねで出来てしまったりするので、
ルールに従って、間違えずに処理すれば、
誰でも出来る簿記などというモノは、出来なくても良いだろう、
という気持ちになったりする訳です。
まあ、確かに、簿記は千本ノックを受けるようなものなので、
「理屈はいいから、身体で覚えろ」式の勉強は、
大人になってから始めるには、抵抗があると思うのですが、
そうは言っても、
目の前で起こっている事象を、
どのような会計情報として記録するか、というのは、
日本では「簿記」の領域なので、
これを避けて「会計」を理解するというのは、難しいように思うんですね。
なぜなら、
目の前で起こっている事象が、どのような会計情報に変換されるのか、分かっていないと、
その反対の、
そうして作られた会計情報が、どういう「目の前で起こっている事象」を表しているのか、
分からないと思うので。
では、どうすれば良いか?
海外の同業者や、海外の経理の人と話す時、いつも思うことなのですが、
彼等は、恐らく、日本のような寺子屋式の勉強で、
簿記の考え方を身に付けたのではないと思うのですが、
なので、制限時間内にバシバシと電卓を叩き、
回答を書き切るようなタイプの試験は、
絶対に受からない、と思うのですが、
一緒に仕事をしていても、
そういった勉強方法を経由しなかったことによる支障を、
一切、感じることがないことを考えると、
日本の、会計の入口が簿記、というのは、
相当、問題があるし、
会計に対する認識を、誤ったものにしているんだろうな、
とすら思えてしまいます。
即ち、「会計を知っていると役に立つ」の「会計」は
「(この一風変わった)簿記(という日本特有の試験に受かる力)」ではないんだけどな、
という気持ちですね。