こんにちは。公認会計士の山本です。
為替リスクのヘッジ手法として最も一般的なのは為替予約ですが、
入ってくることは確実なんだけど、いつ入金になるか分からない債権だったり、
支払が度々、遅延する顧客からの入金だと、
期日の延長が認められていない為替予約は、使い勝手が悪いのではないかと思います。
以下、設例を書いてみます。
(設例)
(取引の流れ)
11月15日 商品10万㌦を海外顧客に売り渡す。
12月15日 代金10万㌦、入金。
(為替レート)
11月15日 SPOT 113.00円 1ヶ月後の先物 112.80円
12月15日 SPOT 110.00円
(金利)
11月15日 期間1ヶ月 米㌦ 2.3%/年 日本円 0%/年
1.為替予約を使った場合
(仕訳)
11月15日
借方)売掛金 11,280,000円 貸方)売上 11,280,000円
11月15日に12月15日期日の10万㌦のドル売り予約を締結し
振当法で処理。
12月15日
借方)円預金 11,280,000円 貸方)売掛金 11,280,000円
入金した10万㌦を為替予約で円転し円預金に入金。
2.FXを使った場合
(仕訳)
11月15日
(取引本体)
借方)売掛金 11,300,000円 貸方)売上 11,300,000円
商品の売上は当日SPOTレートで計上。
(FX)
借方)未収金(円)11,300,000円 貸方)未払金(U$)11,300,000円
11月15日にFXで10万㌦のドル売りを行う
12月15日
(取引本体)
借方)円預金 11,000,000円 貸方)売掛金 11,300,000円
為替差損 300,000円
商品代金は当日SPOTレートで円転し円預金に入金。
113円の時に売り上げたものが、110円の時に入金したので、
30万円の為替差損が発生。
(FX)
借方)未払金(U$)11,300,000円 貸方)未収金(円)11,300,000円
円預金 300,000円 為替差益 300,000円
支払利息 20,000円 円預金 20,000円
113円で売った10万㌦を、110円で買い戻す。
30万円の為替差益が発生。
ドル債務(未払金)の支払利息2万円も発生。
この設例では、金融機関のマージンを考慮していませんし、また、ざっくりとした数字にしてありますので、実際はこの数字の通りになる訳ではありませんが、1と2の円預金の入金額を見て頂ければ分かる通り、2の方法でもヘッジが出来る、ということになります。
まあ、ただ、為替予約だと銀行の中で行われているので見えないのですが、1の方法でも、2の方法でも、10万㌦を11月15日に売っておき、それを12月15日まで、ドル、円の其々の貸借のポジションとして保持し、その期間の金利を付利して、12月15日にポジションを解消する、という話ですので、どちらの方法でもヘッジが出来る、というのは、結局、同じことをしているだけではあるのですが。
以下、FXを使うメリット、デメリットを見てみます。
FXを使うメリット
- 決済期日が不確定でも為替リスクのヘッジが可能。
- 金融機関に取られる金利、為替マージンが、為替予約よりも低い。
FXを使うデメリット
- 金額が1万㌦単位であり、千ドル以下の単位の金額を細かく指定できない。
- 証拠金が必要。
- 証拠金が不十分だと、期日を待たずに強制決済されてしまう可能性がある。
- 為替予約のように一本一本、銀行が期日管理をしてくれる訳ではないため、会社自身がどの分のヘッジか、しっかりと管理することが必要になる。
- 金利に関しては、通貨、売り/買い、期間によっては、銀行のマージンを勘案してもなお、FXが必ずしも有利でない時もある。