シリーズ「こういう会社にグローバルニッチトップ企業になってもらいたい」第5回
こんにちは。公認会計士の山本です。
シリーズ(「こういう会社にグローバルニッチトップ企業になってもらいたい」)5回目は、佐藤食品工業株式会社という会社です。
会社のHPの社長挨拶には、企業目的「人類貢献」、企業目標「グローバルワン」とあり、かなり期待してしまったのですが、会社のHP、有価証券報告書、ネットのその他の情報を見ても、この会社が海外に出ていこうとしている様子は微塵も見られず、この会社の扱う製品・技術は、日本国内にしか市場が存在しないのだろうか?、という気持ちになってしまいました。
私の感想が先になってしまいましたが、この会社の得意とする技術は、お茶、天然調味料、植物エキス、そして、アルコール等から水分を飛ばし、風味を完璧に残したまま粉末化することで、お茶であれば、水に戻すことでおいしいお茶になり、天然調味料であれば、食品加工に使いやすい素材を提供することに成功しています。
会社の直近5年間の業績を見ると、
安定した利益を確保しつつ、徐々に売上高を伸ばしていることが分かります。
ただ、もう少し時代を遡ると、
安定的に推移しているとは言えますが、業績を伸ばしているとは決して言えないように思われます。
次に財務の状況を見てみますと、
直近の自己資本比率は90%を超え、現金・預金の額が78億円あり、投資有価証券も合せると100億円を超え、労務費と販管費を足した額、18億円の5倍強の額になっていますので、5年間、一切の仕事が無くなっても、誰一人解雇することなく、会社が存続し続けられる計算になります。
まあ、逆に言えば、それだけ、有効に活用されていない、多くの資産が会社の中に置き続けられている、とも言える訳で、株主はそれでよしとしているのだろうか?、と思い、株主構成を見てみると、
筆頭株主が創業者の32.77%、そこから下は持合株式が続き、創業者持分と持合株式で優に6割を超える議決権を占めており、現在の会社の状況とこの株主構成を考えると、この会社は、これから先も世界を目指すことなく、このまま行くのだろうなと思われました。
まあ、ただ、株主や会社で働く人にとっては、それで十分なのかも知れませんが、日本にとっては、こういう世界に通用する技術を持つ会社がチャレンジしない、というのは勿体ない話と思えました。
まあ、後、言えるのは、やはり、海外事業の進め方が分からない、というのが一番大きな要因なのかも知れません。分からないから怖い、失敗事例も多く聞くし、ということかと思います。この辺は、いつも書いていることではあるのですが、ドイツを始めとする欧州企業と日本企業の大きな違いだと思っています。
私が見てきたドイツの隠れたチャンピオン企業であれば、親会社の従業員数がこの会社と同じ200人弱の地方の会社であっても、この会社のような世界に通用する技術を持っていれば、海外子会社を20社以上持ち、全世界で事業展開していたとしても、まあ、そんなものだろう、という感覚ですので。
(いつもおまけのグラフ - 日本の立ち位置)