こんにちは。公認会計士の山本です。
十数年前の話なのですが、
事業をしていた親戚が銀行からお金を借りるにあたり、
私の父が銀行に差し入れていた連帯保証の
履行を請求されたことがありました。
その何年か前に、親戚の事業が破綻して、
その直後、父の所に銀行から連絡があったのですが、
父自身が、事業をしていた時の借入の返済を続けていたので、
それを払い終ったら払う、と伝えたところ、
何も言ってこなかったので、そのままにしてある、と聞いていたのですが、
ある日、突然、裁判所から分厚い封筒が送られてきて、
父の土地が仮差押えになってしまったんですね。
当時の私は、年がら年中、メガから信金まで、銀行の監査をしていたので、
銀行が、この貸付債権をどう見ていて、
今回、何故、そういう措置に出てきたのかも、大体、察しがつきました。
また、
幾らの支払までなら、父が生活を維持できるか、も確認し、
両者を総合して、
この辺の金額が落し所で、
これよりも、銀行に譲歩させられたら「御の字」だ、みたいな感覚で、
銀行に赴き、交渉をしてきた訳なんですが、
まあ、結果は、こちらの想定よりも、若干、良かった、感じではあったのですが、
まあ、何にしても、あの時の交渉は、気持ちの良いものではなかった。
何故なら、
若し、銀行が一切、譲歩せず、「貸付金+遅延損害金」全額の支払履行を求めてきても、
こちらは何も対抗出来ない訳で、
そうなったら、
私の父のケースで言えば、
土地がとられ、
土地も含めて考えていた、家族全体の将来設計が崩れ、
私も含めた、他の家族の生活にまで、甚大な影響が及ぶ。
なので、事ここに至っては、保証人は、ただただ銀行に懇願する以外にない立場になる、
というのが、この構図の気持ち悪さ、の根源なんだと思うんですね。
まあ、ホント、困った制度としか言いようがないとは思うんですけど。
ただ、当り前のことではあるのですが、
事業というものは、良い時もあれば、悪い時もある。
また、成功した状態をキープし続けられる、という保証は何処にもない。
事業にそういう性質があることが自明なのに、
そのためのリスクが「これ」では、釣り合っていない。
私は、銀行には、事業から信用が得られるかどうかを見て欲しいと思っています。
事業が信用を生み出せなくなったら、一緒になって信用を生み出す方法を考え、
それでも、ダメなら、そこで退場を言い渡す、そういう役回りです。
そうすれば、事業がダメになっても、事業主が痛む前にレッドカードが渡されるので、
失敗を経験した事業主は、その経験を次に活かせるし、
社会にも、銀行という信用のフィルターを通った事業が提供されるので、
事業というものに対する信用が生まれる。そういう役回りですね。
まあ、しかし「一回、失敗したら終り。で、一族郎党に類が及ぶ」という制度は、
いつの時代の、どこの国の制度なんだ? と、(サラリーマンや公務員の人などは)
思うのかも知れませんが、
まあ、普通に、今もある、我が国の制度なんですね。
で、これに対して、
「じゃ、やらなければいいじゃん」
という言葉が正解になる限りは、
起業も、事業承継も進まないんだと思います。