10/05/2017

「貯蓄から投資へ」

昨日、10月4日は、「証券投資の日」ということで、

日経新聞の中ほどに、「もっと投資をしましょう」といった感じの、日本証券業協会の広告が掲載されていました。
で、その中にあった「米英日の家計金融資産構成比(2016年末)-出典:金融庁-」というグラフが気になったので、金融庁のサイトに行ってみました。
で、見つけたのが、こちらの資料(http://www.fsa.go.jp/singi/kakei/siryou/20170203/03.pdf)です。「家計の安定的な資産形成に関する有識者会議」(第一回)の添付資料です。
新聞広告に記載されていたグラフは2016年末のものでしたが、こちらの資料にある同じグラフは2015年末。まあ、一年くらいいいか、ということで、これで満足したのですが、
この資料の2ページ目の「各国の家計金融資産構成比」というグラフを見ると、
アメリカ、イギリス、日本の家計金融資産の金額、構成比が並んでいます。
広告で言っているように、アメリカは現預金の比率が13.7%なのに対し、日本は51.9%と、家計の金融資産に占める現預金の比率が圧倒的に大きい。
一方、間接保有も含めた株式・投信投資割合は、アメリカが45.4%なのに対し、日本は18.8%と低い。
なので、日本人はもっとリスクをとって、投資をしなければ、
という気持ちになりかけたのですが、
ふと、そのグラフの隣にある「各国の家計金融資産の推移」というグラフを見ると、
1995年を「1」とすると、2015年のアメリカの家計金融資産は「3.11」、日本は「1.47」とある。
更に、同じグラフにある「運用リターンによる家計金融資産の推移」を見ると、1995年を「1」とすると、アメリカは「2.32」、日本は「1.15」とある。
と、ここに来て、「あれ、これって、議論の方向がおかしいのでは」と思ってしまった訳で。
日本の家計の金融資産に占める投資の割合が低いのは、日本人が安全資産である現預金を選好した結果ではなく、投資したものが増えていないからなのではないか。
まあ、多少はそういう「選好」があるのかも知れませんが、投資の割合が低い原因を、それだけに求めようとするのはおかしい、と思った訳で。
若し、日本も、アメリカ並みに、投資したものが増えていたのであれば、18.8%(=2015年の日本の家計金融資産に占める投資の比率)は、30%近い数字にはなっていたのでは、と思えたりします。
かなり乱暴な仮定の計算
    2015年末の日本の家計の金融資産構成比   投資 18.8% + 非投資 81.2% = 100%
    アメリカ並みに投資が増えていたなら    投資 37.9% + 非投資 81.2% = 119.1%
         (37.9% = 18.8% ÷ 1.15 x 2.32)
                  →      投資 31.8% + 非投資 68.2% = 100%
こんな感じで、疑い深い目で、改めて見てみると、95年を起点に比較していることも、この資料の作成者の意図が感じられてしまいます。
何故なら、1995年末の日本の株式市場の時価総額は「365兆円」、2015年末は「589兆円」。
しかし、1995年ではなく、1989年末であれば「611兆円」あった訳で、
流石に26年も掛けて、時価が「▲4%(611兆円→589兆円)」という数字では、「貯蓄から投資へ」とは、口が裂けても言えなくなってしまいますので、1995年という、バブル後の最安値近辺を起点にした、ということなのでは、と勘繰ってしまいます。
まあ、それは兎も角として、「貯蓄から投資へ」のカギは、上場している会社が自らの時価総額を増やすこと、これに尽きるのではないかと思います。
アメリカ並みに時価総額が増えていたなら、日本の家計の金融資産に占める投資の割合も、それに応じて増えていた訳ですし、
時価総額が増えるのであれば、政府や証券業協会に言われるまでもなく、投資にお金を回す人が増える訳ですから。
で、会社に時価総額を増やさせるにはどうしたらよいか、と言えば、株主が会社にそれを「強烈に」求める以外に無いように思います。
私はアメリカの会社の株も何社か持っていますが、日本の大手企業の株よりは、余程、安心して、持っていられます。
というのは、アメリカの会社の経営者の人たちは、報酬は信じられないくらい高いですが、株主に対する責任、即ち、時価総額に対する責任をきっちりと自覚してくれているからなんですね。
それに比べると、日本の、歴史のある大手企業というのはダメです。
経営者の発する言葉を聞いても、誰のお金を預かっているのか、耳を疑うようなことを平気で言いますし、
実際、そういう会社の時価総額の推移を見ても、こんなんだったら、わざわざリスクのある株式に投資するよりは、貯金して置いておいた方が余程マシ、と思えるような悲しい結果が多い訳ですから。
なので、私自身も、3、4年おきに社長が「ところてん式」に変わるような、日本の大企業の株を買う気持ちにはなれないです。